不動産流通研究所

建物横に別棟を建設し"路地裏の隠れ家"を創出

老朽化が進み、入居テナント数がゼロという深刻な事態に直面していた

3 ~ 4 階のオフィス兼住宅スペース「S O H O APARTMENT」の1室。約10坪の「ハーフスケルトン」仕様(床・壁・天井がコンクリート素地)のシンプルな「ハコ」にキッチン、シャワールームなどの水回りを備えた(写真上)。外観は白塗りにすることで、昼間は明るく、夜のライトアップ時にはシックな雰囲気に。新設した店舗棟との間はあえて「路地」にし、テナントの入口を設けることで、知る人ぞ知る“隠れ家”風店舗を演出している(写真右)

景気の低迷、都市間競争の激化等による地方都市の空洞化は、ここ数年ますます加速しており、そこで業を営む地場不動産会社にとっても、頭の痛い問題となっている。大分県大分市でビルの開発や仲介、管理などを手がける新大分土地(株)(大分県大分市、代表取締役社長:阿南勝啓氏)も、自社で保有する7棟のビルの空室率が年を追うごとに上昇、全棟合計で1998年に20%、2003年には50%を超えた。こうした状況に危機感を持った同社は03年、地域の建築家、デザイナー、ショップ経営者等とともに、ビル再生事業「d,d(dreamsdevelopment)プロジェクト」を立ち上げ、自社ビルのリノベーションをスタートした。
 今回紹介する「新大分第二ビル」は、7棟のうちの1棟で、築41年のテナントビル。同市最大の繁華街「都町」に立地するにもかかわらず、老朽化の進行に伴って空室が増加。03年、主要テナントの退去により、ついに「全室空室」という非常事態に直面していた。そこで、プロジェクトメンバーで検討の結果、大企業向けのオフィスビルではなく、若い起業家をターゲットにした、"個性派"複合ビルとして再生することにしたのである。
 まず、同じ敷地内で隣接する老朽化の激しい木造別棟ビル(寿司屋が入居していた)を取り壊し、新たに敷地奥まで細長い鉄筋コンクリート造2階建ての店舗棟を新設。その建物と既存ビルとの間に「路地」をつくった。ビル1≠Q階の店舗部分は各フロアを3分割してテナント数を増やし、入口を路地に設けることで〝路地裏にある隠れ家"を演出。店舗ゾーン全体を「slowdining(スロウダイニング)」とネーミングした。
 3~4階は、SOHOを基本とするオフィス兼賃貸住宅に。躯体の補強、横引管の更新、水回りの新設、ガラスウォールの設置等を施し、内装の大部分は、コンクリート剥き出しの「ハーフスケルトン」(同社呼称)状態にした。あえてシンプルなハコにすることで、各テナントが自在に演出できる幅を持たせ、かつコストも抑えている。建物外観についても、竣工当時のレトロな雰囲気を残すため、外壁塗装と最小限の改装にとどめている。
 テナント誘致は、敷金(保証金)、礼金をゼロとすることで、同社の狙いどおり、別棟から移転した寿司店に加え、新たに豆腐カフェ、スポーツバー等若い起業家が営む個性的な店舗が軒を連ねた。今では地域の人気スポットとなり、住宅部分ともどもほぼ満室運営を維持している。